一時期模型雑誌でガンプラの「簡単フィニッシュ」というのが流行りましたよね。成型色を生かして仕上げるという。成型色そのままでスミ入れだけのもあれば、成型色の上から同系の色を吹いてシャドウや汚しを入れるものなどもありました。
そんな中、「未塗装でもプラモデル用接着剤で接着すれば合わせ目を消せる」という記事が結構ありました。
が、模型雑誌の記事は結構いい加減で、実際にやって酷い目にあった経験があります。そんな話です。
まあ私はプラモ組み立てるのも塗装するのも基本的に嫌いな人間なんで、そんな私がこんな話するのもどうかな、という気持ちもありますが。
念のためおことわりしておきますが、自分の経験を元に書いています。メーカーとかものによっての素材の微妙な違い、あるいは湿度や温度などの環境によって違ってくる可能性がないわけではないので、その点はご承知おきください。
【重要】普通のハケで塗るプラモデル用接着剤で接着してはいけません
プラモデル用の接着剤は大きく分けて2種類あります。
○「ドロっとしていてハケで塗るタイプ」
一般的にプラモ用接着材と言えばこっちを指す場合が多いでしょう。
タミヤのこの白い蓋のものが代表的かな?
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○「サラサラした流し込みタイプ」
接着したいパーツを合わせて、合わせ目に流して使うタイプです。
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タミヤだと緑の蓋のこれ。
後者の「流し込みタイプ」はサラサラしていて流せる・表面にちょっとくらい付いてもほとんど痕が残らないといったメリットがあり、「合わせ目を消す」よりは「そのまま貼り合せる」という用途で使うもの、だと思います。
なので接着して合わせ目を消す、となれば普通は前者のドロっとした方の接着剤を使います。
が・・・・・
未塗装で成型色を生かして仕上げるという場合、このドロっとした接着剤は絶対に使ってはいけません。
理由は、必ず変色するからです。
具体的にはこうなります。
画像はバンダイのHGUCで発売された「機動戦士Zガンダム」のマラサイです。ドロっとした接着剤で接着して合わせ目を消したもの。
見ての通り、接着した部分が変色して白くなってしまっています。
ネット上に未塗装で接着して合わせ目を消したという方の記事を結構目にしますので、「え、ウソ!?」と驚く方もいらっしゃるでしょう。実はこれ、接着した直後は変色しません。しかし数ヶ月くらいだったでしょうか?時間が経過すると変色して白くなってしまうのです。
こんな事になるにも関わらず模型雑誌が記事にしてしまっていたのは、おそらく数ヶ月の経年変化を確認していなかったのだと思います。
白く変色するなら、白いパーツなら問題ないのでは?
そう思う人もいらっしゃるでしょう。でも白いパーツもダメ。白いパーツは黄色く変色します。HGUCのキュベレイでやった事があります。
透明樹脂が変色する、らしい
プラモデル用の接着剤は、プラスチックを溶かして接着するもの。模型雑誌でもそう書かれていたのを目にした覚えがあります。だから成型色のままで合わせ目も消えるはず・・・・なのに何故変色するのか?
どこで聞いた話かは忘れてしまったのですが、プラモデル用の接着剤というのは「流し込みタイプ」は純粋な接着剤のみで、「ハケで塗るタイプ」は接着剤に透明な樹脂が混ぜられているものらしく、この透明な樹脂が時間経過で変色してしまうとか。
接着剤は1日や2日では乾燥しません
ちょっと話が脱線しますけど、ドロっとしたタイプの接着剤は完全乾燥に時間が掛かります。模型雑誌の簡単フィニッシュの記事で、「2、3日置いて乾燥したらはみ出した部分をヤスリがけする」みたいな記述を見た覚えがあるのですが、2,3日でヤスリかけてはダメです。
確かに1日2日で乾きはするんですよ。でも完全には乾燥していません。この接着剤やそれで溶かされたプラは溶剤分が抜ける事で乾燥するので、乾燥する時に抜けた溶剤分だけ体積が減ります。
なので完全に乾燥する前にヤスリをかけて平らにすると、その後に溶剤分が抜けて体積が減り、平らにしたはずが凹みが出来てしまうという事が起こります。(「肉やせ」とか「ヒケ」と呼ばれる現象)
具体的な乾燥時間は、接着剤の量によって変わってくるかと思いますが、私は最低でも1週間は置いておきます。いや、1週間でも怪しいと思っていますね。
ちなみにラッカーパテも同じ事が言えます。乾燥時に体積が変わるものなので、完全乾燥するまでは余分な部分をヤスリで削ってはいけません。
合わせ目だけ塗装する(オススメ出来ません)
これは正直余談なんですが、せっかくだから書きます。
私はガンプラは動かして遊びたい。でも合わせ目は見苦しいので出来れば消したい。そんなわけでHGUCのマラサイで無塗装での合わせ目消しを試みたものの接着面が白くなるという痛い目を見てしまいました。
当時ガンプラは新作が出る度に「ガンダムカラーセット」が出ており、これは成型色にかなり近い色のものが多かった。そこで考えたのが、「接着した合わせ目付近だけ塗装する」というもの。
これまた「機動戦士Zガンダム」のギャプラン、バンダイのHGUCです。
合わせ目を消し、その面だけガンダムカラーで塗装するというやり方で製作しました。塗装は全てエアブラシ。ガンダムカラーってエアブラシで吹くとプラに近いツヤ具合(ツヤ消し気味の半光沢)になるんですよね。
肩アーマー、下腕とも合わせ目が出てしまう構成なんですが、合わせ目を消してその面だけ塗装しています。
肩は上面も合わせ目が出るので、結局全部塗装。肩の側面にある丸い凹みは合わせ目の処理がやり難いので、コトブキヤのバーニアパーツを赤で塗装して貼っています。ここがバーニアなのかは分かりませんけど。
あと胸のダクトのイエローは成型色で色分けされているのですが塗装してます。イエローの部分は頭のヒサシの部分とここしかないので、ヒサシのイエロー塗るついでに一緒に塗って色を合わせてしまいました。
太ももやスネも合わせ目を消して前面と後面だけ塗装しています。
超面倒くさいです
何かそこそこお手軽に出来そうな感じがするかもしれませんが、全然そんな事はありません。
合わせ目消しや塗装をやっていらっしゃる方なら分かるかと思いますが、合わせ目を消して綺麗に平らにしたつもりでも、サフを吹いたらきちんと平らになっていない事って往々にしてありますよね。結局サフ吹いてみないと分からない。なのでこれ、サフ吹いているんですよ、塗る面だけ(笑)
サフ吹いて、塗らない面はシンナーを付けた綿棒で拭きとって、合わせ目が綺麗に消えてない部分やヒケを埋めて、またサフ吹いてまだ合わせ目消えてないや、とパテ盛って埋めて、またサフ吹いて塗らない面はシンナーを付けた綿棒で拭きとって・・・・という具合でした。
で、塗装したら、塗らない面はシンナー付けた綿棒でやっぱり拭くわけですが、この時ともすると塗った面と塗っていない面の境にサフの色が見えてしまう・・・。このため、シンナー綿棒で塗装する面のエッジのサフを少し予め落としておく必要があります。
ハッキリ言って超面倒くさいです。正直、全塗装する方が楽なんじゃないか、という。
しかも大して意味がない
完成後も動かして触れるように、というのが目的のはずだったのですが、結局かなりの部分を塗装しているので、気軽に触れません(笑)
それどころか・・・
太もものエッジの塗装が剥げてます。これ、組み立てたらフロントスカートと擦れて速攻で剥げました(笑)
まあHGUCのギャプランはパーツの合いがちょっと良くない部分があったり、ヒケが多かったり、塗り分けが多かったり、何より「どうせ塗装するならちゃんとそれらを処理しないと」と思ってしまったからという気はしますけど。これは本当にオススメできません。というか2度とやらない(笑)
流し込みタイプの接着剤で合わせ目は消せるのか?実践してみました
前述のように接着部分の変色は透明な樹脂成分によっておこる(らしい)。じゃあ透明樹脂が入っていない流し込み接着剤ならどうだろうか?
という事でやってみました。
これはトミーテックの「リトルアーモリー」の最初に発売された「M240B」のストック部分です。これはただ接着しただけの状態。
流し込みタイプは樹脂分が無い上に乾燥が早いためかプラスチックがあまり溶けてくれません。なので本来の使い方である「接着したいパーツを合わせてから接着剤を流し込む」のでは合わせ目を埋めるのは厳しい。という事で接着面に接着剤を塗り、すぐ乾燥してしまうのでまた塗り・・・というのを何度も繰り返してからパーツ同士を合わせました。
流し込みタイプの接着剤の乾燥時間は、どのくらいなのかよく分かりません。接着剤そのものは目に見えてあっという間に乾燥していくのですが、この接着剤で溶けたプラスチックから接着剤が抜けきるまでの時間となると、見えないものなんで分からない。
(透明樹脂分が無い分、ドロっとしたタイプよりは早いだろうとは思いますが。)
で、実際どのくらい乾燥させたかというと・・・1年半(笑)
発売してすぐに買い、1ヶ月以内に接着して・・・・・そのまま放置状態でした。
ここまで時間が経っても変色はしていませんでしたので、やっぱり流し込みタイプは変色しないという事でしょうか。
綺麗に合わせ目が消えています。先ほども書きましたが接着部分での変色もありません。どうやら流し込みタイプの接着剤であれば成型色のまま無塗装で合わせ目を消す事が可能なようです。
とは言っても、実は光の加減で接着面がうっすらと見える事があります。しかしそれでも、合わせ目がそのままよりは見た目が綺麗でしょう。
そうは言っても簡単ではないと思います
まず先ほども書きましたが、接着剤で溶かしたプラスチックだけで合わせ目を埋めるのが難しい。「接着面からムニュっと溶けたプラがちょっと出てきている」という状態にするのが難しいです。塗装前提ならパテなどで埋められるので極端な話、接着は「くっついてくれさえすればOK」とも言えますが、塗装しない場合は溶けたプラで埋められなければ終わりなわけです。
乾燥が早いがために接着剤を塗って、乾いてしまうけどまた塗って・・・と繰り返してやるわけですが、そうなると大きいパーツはちょっと厳しそうですね。1/100スケールのガンプラのライフルなんかだときちんと接着面全体が溶けてくれなそうです。
パーツを張り合わせた後にパーツをスリスリとずらして擦り合わせてやると少しは溶けやすくなるのですがパーツが単純に真ん中モナカ割りではなく、出っ張っている部分や凹んでいる部分が片側に寄せてあるパーツだとこのパーツスリスリがやり難い。
このM240Bのストックも、丸で囲んだ部分は真ん中で割られておらず片側にくっ付いているので、スリスリがやり難くかった。
あと逆に、溶けたプラがはみ出してこういった部分にくっ付いてしまわないように注意も必要です。塗装前提ならこういった部分の付近には接着剤をあまり付けないようにして、そこだけはパテで埋めるという方法が無難なんですが、未塗装ではそうもいかない。
こういう真ん中のディテールを片側に寄せてくれるのって、真ん中で割られるよりも本来は合わせ目消しが楽だし綺麗に出来るので好ましいのですが、流し込み接着剤だけで未塗装で合わせ目を消す、となると逆に難しいのかも。
あと、やはり「削るしか選択肢が無い」というのも辛いところです。
画像は「リトルアーモリー」のM4A1のレシーバー部分。矢印で示した部分が段差になってしまっています。今のプラモデルは精度が高いとは言え、パーツ同士が完全にピッタリ合うという事は少ないです。こういった段差が出来てしまった場合、「高くなっている方を削る」か「低くなっている方にパテ等を盛るか」を形状によって選択します。
(後者の方が無難な場合が多いように思えます)
しかし塗装をしない場合は前者しか選択肢がありません。無理に削ると形が崩れそうな場合でも、削るしかないです。
これはパーティングラインの処理でも同じ事が言えますね。
無塗装で合わせ目を消すなら流し込みタイプがベスト・・・かな
流し込みタイプなら変色せずに合わせ目を消せると考えて良さそうです。ただ、再三になりますが流し込みタイプで合わせ目を埋められるほどプラを溶かすのは結構大変なので、やっぱり簡単フィニッシュは簡単ではないという(笑)
私も流し込みタイプで合わせ目消しをやったのはこれが初めてなので、慣れれば結構いけるのかな・・・という気もしています。
最近ガンプラを全然作っていないのですが、合わせ目が出るので敬遠していたガンプラをこのやり方で作ってみたい気がしなくもないです。「作ってみたい」と言い切れないのがアレですが(笑)
という事で、以上、無塗装での合わせ目消しの話でした。
タミヤのオレンジの流し込みは合わせ目が変色しましたよw
ブログ管理人です。
タミヤのオレンジの蓋の流し込みというと、リモネンの流し込みタイプですよね。
リモネンの方は使った事が無いのですが、普通の流し込み接着剤とは違うのかもしれません。柑橘類から抽出されたものって、透明のままではいられなさそうな感じがします。